たとえばまたこんな話
ユーラシア大陸のちょっと西側の真ん中あたりにあった小さな国の昔々・・・
その国はちょうど滋賀県のような姿で、真ん中に大きな湖があって、その周辺に街や村が拓かれていた。そして、その大きな湖には、人々がそこに住むよりもずっと、太古から、リュウが住んでいると言う言い伝えがあった。
「人が住む前のことをなんで言い伝えに?」
・・・矛盾しているかもしれないが、そうでもないらしい。
なぜなら、この湖にいちばん最初に足を踏み入れた一人の旅人が、その国を建てた最初の王様だったからだ。
旅人はハンターだった。
視力が強く弓の名手で(その時代銃なんて物騒な物はまだ発明されていない)二百メートルほど離れた獲物を捕らえる能力を持つ。
男前でイケメンだったので既に2人の幼女と妻を持つ。 家族は、数年ごとに村から村へ、街から街へと移り住む、たいそうお気楽な生活を営んでいた。(テラ安直な設定だが、世界史をちょちょいと紐解くと、民族の大移動とかがあったりで、まったくでたらめではなかろうて)
最初に竜を見つけたのは妻だった。
悲鳴を聞いて駆けつけてきたときには、湖畔に大きな波だけが砂浜をなでる音を重ねていた。妻は体が冷え切るほど青ざめて、ぶるぶる震えていた。
家の中を暖めて妻を寝かした次の日の早朝、水汲みに行くと、それは、薄い霞にぼんやりと包まれて、昨日の湖畔の近くにじっと立って夫を見つめていた。
リュウ「昨日は驚かせてすまないことをした。これを煎じて飲ませると回復するだろう。」
リュウは胸の辺りの鱗を一枚剥ぎ取って、夫に渡すと、霞のかぶる湖の奥の方へと去っていった。
夫がリュウの言ったとおりのことをすると、妻はみるみる回復した。
この出来事が噂になってそこかしこに広まると、やれリュウを退治したとか、いろいろ話に尾ひれが付いてまいります。夫はたちまちのうちに周囲からの支持を集め、とんとん拍子に出世して、一年足らずで一国の主となったのです。
さて、この話をこれでおしまいにすると、石をぶつけられそうなので、ちょっとだけその続きの一辺をご紹介。
・・・妻は夫より長生きし、初代女王として二百年くらい君臨した。
・・・すくすくと育った幼女のうち姉が病に倒れ、妹はリュウを探しに旅に出た。
・・・リュウの存在は当初湖の四方に生息するとされていたが、それも先の話で尾ひれの付いた噂のひとつかもしれないし、それを実際に確認しに行った者はだれ一人いなかった・・・
さて結末は・・・
旅人だけが知っている。
おしまい
Windowsムービーメーカーで作成、24FPS
ブラックからホワイトまで挿入画像総数19枚
音声ビットレート160、FLVエンコードはmencoder_vp6setを使用
後段にある字幕のうち「そのたたち」は「そなたたち」の間違いであるが、この辺はご愛嬌か、そのままにしておこうっと。
以上
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